大阪市天王寺区（てんのうじく）は、大阪市を構成する２４行政区のうちの一つで、名前の由来は、日本最古の官営寺院として、聖徳太子によって建立された天王寺や四天王寺の名前に由来しているとされています。その名の通り、寺院が多数存在するのも天王寺区ならではの特徴の１つです。

天王寺区は商業地域がその半分を占めており、商業地の中心はＪＲ大阪環状線の天王寺駅（大阪市天王寺区悲田院町）や、近鉄大阪上本町駅（大阪市天王寺区上本町６丁目）などとなっています。特に天王寺駅は梅田、難波に次ぐターミナル駅となっており、境を接している大阪市阿倍野区の北端に位置する大阪阿部野橋駅（大阪市阿倍野区阿倍野筋1丁目）周辺、あべのハルカスなどを中心とした商業地域と共に「天王寺・阿倍野」と位置づけられ、近畿地方でも有数の商業地域として発展しています。

一方で、天王寺区内の上町台地上にあたる天王寺区生玉寺町（いくたまてらまち）や天王寺区生玉前町（いくたままえまち）には住宅地が多く、公園、教育機関、医療機関もそれらの地域の周辺には多く存在しています。一方でセレブリティな人々が住んでいる住宅地も天王寺区真法院町や天王寺区小宮町に存在しており、これらの地域では、区内に珍しい一軒家ばかりが並んでいる閑静な住宅地が残されています。それ以外の地域には住宅やアパートは少なく、ビルやマンションなど土地の高度利用が進んでいるのも天王寺区の特徴です。

天王寺区の人口は、１９５０年代に８５，０００人あまりに達してからは、以来地価の高騰や住宅地の減少による影響もあり、減少傾向が続いていましたが、近年地価の下落や再開発などが進んだことで「都心回帰」の啓行が高まったことから、２０００年代前半より再び増加傾向に転じています。交通の便が良い、市内有数の文教地区としての特性が見直された結果、２００５年に行われた国勢調査では前回の調査より＋９．０％という高い増加率を記録しており、この傾向はしばらく続くのではないかと言われています。

天王寺区は、企業城下町の一面もあります。近鉄（近畿日本鉄道）グループの本社が存在する他、寺社仏閣の修繕を全国的に引き受けている日本最古の技術者集団をベースにした金剛組などが本社を構えており、他にも全国に名だたる企業が天王寺区内に本社を構えています。その一方で、天王寺動物園や大阪市立美術館などの官営施設も多く存在しており、多くの観光客が訪れるスポットとなっています。特に外国人観光客は、これらの施設に加えて四天王寺への参拝を行う人々も存在しています。

大阪市天王寺区の中古住宅は、１９６０年代以降に建てられた昭和風の住宅が残されている天王寺区真法院町のような地域もあれば、ＪＲ寺田町駅周辺となる天王寺区勝山３丁目など小規模の住宅地もあるなど、多種多様な住宅が混在しています。間取りとしては２ＤＫや３ＤＫが一般的で、同様の間取りで作られたタワーマンションが主要駅の周辺に建てられており、ＪＲ大阪駅の北側には令和になってから竣工したマンション群がそびえています。古い一戸建て住宅については、ここ数年でリノベーションされた物件も多く、モダンなデザインや最新の設備が整った住宅が増えています。ＪＲ桃谷駅に近い大阪市天王寺区堂ヶ芝２丁目に近いエリアではリノベーションに適した中古住宅が多数存在しています。現代ではリノベーション可能な物件をあえて探す若い世代も多くなっており、シェアハウスや民泊物件として中古物件を活用するケースも増えています。

大阪市天王寺区の中古住宅の価格は、２０２３年のデータによると、約２，５００万円から３，５００万円程度と幅広く分かれています。分譲マンションとなると約４，５００万円から５，０００万円程度が平均的です。ＪＲ天王寺駅周辺の高層マンションは億単位の物件もあります。ただし、具体的な価格は物件の条件によって大きく変わります。もともと中古住宅が少ない地域だったのですが、中古住宅が出てもすぐに買い手がつく地域となっています。

ちなみに、４０坪（約１３２㎡）の住宅用地の相場は、約４，０００万円から５，０００万円程度です。この価格帯は、エリアによって異なるため、具体的な場所によって変動します。住宅用地の価格は、特に人気のあるエリアでは高額になる傾向があります。天王寺区国分町や天王寺区細工町一丁目には、比較的多くの住宅用地が分譲されていますが、２０坪から３０坪程度のやや小さめの宅地が多くなっています。

大阪市天王寺区には、公立・私立あわせて２４か所の保育園があります。これらの施設は地域の子育てニーズに応じて多様なサービスを提供しています。公立保育園と私立保育園が多数存在していますが、いずれの施設においてもニーズに沿った保育が行われています。

２０２４年度の天王寺区内保育園への入園希望倍率は１．０３倍となっており、大阪市内の中でも倍率が高いエリアになっています。２０２４年度以降もこの状況が当面続くことが予想されています。特に、３歳児の入園希望が著しく多く、入園倍率は驚きの２．２９倍となっています。３歳児以降も比較的倍率が高いことから、天王寺区内の保育園への入園希望がある場合は、入園調整があることを覚悟した方がよさそうです。

大阪市天王寺区は、子育て世帯を支援するためにさまざまな施策を実施しています。天王寺区子ども・子育てプラザ（大阪市天王寺区味原町）は子どもが楽しく遊べて、お父さんお母さんは子育て情報を聞くことが出来る施設です。館内は０歳から未就学のお子さんが楽しめる「つどいの広場」をはじめ、「子育て支援センター」を活用すれば、親同士の交流や育児相談が行われ、子育てのためにさまざまな情報共有や専門家への相談を行うことができます。

大阪市天王寺区における移住者支援としては、大阪府の制度である新婚・子育て世帯向け分譲住宅購入融資利子補給制度があります。この制度は新婚世帯（夫婦ともに満４０歳未満かつ婚姻届出後５年以内の世帯）または子育て世帯（小学校６年生以下の子どもがいる世帯）で、市内で住宅を民間金融機関などの融資を受けて初めて建築・取得したものが対象となり、住宅ローンに対して年０．５％以内（融資利率を上限とする）、最長５年間の利子補給を行ってくれる制度で、多くの利用者がいます。

また、民間戸建住宅等の耐震診断や改修等補助制度もあり、２０００年５月３１日以前に建築された住宅であれば、耐震診断は費用の１０／１１、１戸上限５万円、耐震改修設計は費用の２／３、１戸上限１０万円、耐震改修工事は費用の１／２、１戸上限１００万円、耐震除却工事は費用の１／３、１戸上限５０万円など、様々な補助金の交付が受けられます。

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