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活用か?売却か?空き家オーナーが選ぶ3つの未来

親から実家を相続したものの、誰も住む予定がなく空き家になってしまった。あるいは転勤や転居のために長期間使われていない家を抱えている。そうした状況は今の日本で決して珍しくありません。総務省の調査では、全国の空き家は849万戸を超え、住宅全体の13.6%に達しています。これは単なる数字ではなく、社会全体が直面している深刻な課題なのです。

だからこそ空き家のオーナーは、いま目の前の物件をどう扱うかを真剣に考える必要があります。選択肢は大きく三つあります。一つは貸して収益源に変えること。もう一つはリフォームして自分や家族が再利用すること。そして最後は売却して現金化することです。ここからは、それぞれの「3つの未来」を具体的に掘り下げていきます。

空き家を貸して収益源に変える未来

まず一つ目の選択肢は、空き家を「貸す」ことで新しい収益源に変える道です。人が住まなくなった家は急速に劣化しますが、誰かが生活を始めれば建物は呼吸を取り戻し、傷みの進行も抑えられます。さらに家賃収入という安定した利益が生まれ、オーナーにとって経済的なメリットも大きくなります。

たとえば地方都市にある古民家をリフォームして移住希望者に貸すケースがあります。ある男性は築四十年以上の木造住宅を約三百万円かけて改装しました。水回りや断熱性能を改善し、使いやすい住居に整えたところ、すぐに入居希望者が見つかり、毎月の家賃収入を得られるようになりました。その結果、維持費をカバーするどころかプラス収益となり、将来的に売却する際にも資産価値を保つことができました。

貸す方法にもバリエーションがあります。一般的な賃貸住宅として貸し出すのがもっともオーソドックスですが、広い家であればシェアハウスに改装するという選択肢もあります。学生や単身者に人気があり、複数人から安定した収入を得られるメリットがあります。また、観光地や地方移住者が増えている地域では、民泊やゲストハウスとしての活用も注目されています。短期滞在者向けに開放することで、通常の賃貸よりも高い収益を得られる場合もあります。

もちろんデメリットもあります。リフォームには初期投資が必要であり、家の状態によっては数百万円単位の費用がかかります。また、入居者とのやり取りや修繕対応といった管理業務をどうするかも大きな課題です。管理会社に委託すれば安心ですが、その分手数料が発生し、収益は目減りします。それでも、空き家をそのまま放置して資産価値を失わせるより、貸して収益を得る方が合理的な選択となるケースは多いのです。

リフォームして再び家族の拠点にする未来

二つ目の未来は「リフォームして自分や家族が再び住む」という選択です。親から受け継いだ家には思い出が詰まっており、単なる資産として処分することに抵抗を感じる人も少なくありません。そのため、感情的な価値を重視してリフォームし、家族の拠点として再利用する人が増えています。

ある女性は相続した築四十年の実家を大幅にリフォームし、都会と田舎を行き来する「二拠点生活」を始めました。平日は都会で働き、週末や長期休暇には田舎の家で自然に囲まれた時間を過ごす。そこには両親の記憶や地域の人とのつながりが残っており、単なる住まい以上の価値を感じるといいます。彼女は「家を売らずに残したことで、心の豊かさを手に入れた」と語っています。

ただし、この道には現実的な課題も多く存在します。築年数の古い住宅では、耐震性や断熱性能が現代の基準に合わず、大規模な改修工事が必要になります。費用は新築と同じ、あるいはそれ以上にかかることも珍しくありません。さらに、リフォームしたものの実際にはほとんど利用せず、再び空き家状態に戻ってしまうケースもあります。そうなれば費用だけが無駄になるリスクがあります。

それでも家族の思い出を守りたい、親の残した家を大切にしたいという気持ちは数字では測れない価値です。老後の住まいとして活用したり、子世帯に提供して住宅事情を助けたりと、ライフステージに応じて活かし方は多様です。経済的合理性だけでなく、精神的な豊かさや家族のつながりを重視する人にとっては、リフォームによる再利用は大きな意味を持つ未来なのです。

売却して現金化する未来

三つ目の未来は「売却して現金化する」という選択です。もっともシンプルで確実に負担から解放される方法であり、経済的にもメリットが大きい手段です。

空き家は所有しているだけで固定資産税や都市計画税といった維持費がかかります。さらに、管理を怠れば劣化が進み、資産価値は下がる一方です。売却を決断すれば、これらの負担から一気に解放され、まとまった現金を手に入れることができます。その資金を老後の生活費や子どもの教育資金、あるいは新しい住まいの購入に充てることも可能です。

実際に東京都内で相続した空き家を売却したある男性は、相続登記を早めに済ませて不動産会社に依頼しました。すると数か月で買主が見つかり、想定より高い価格で売却することができました。得られた資金は子どもの進学費用に充てられ、「放置せず早めに動いたことが何より正解だった」と振り返っています。

売却を考える際に重要なのは、税制上の優遇措置です。特に注目すべきは「被相続人居住用財産の3000万円特別控除」です。これは、相続によって取得した家屋を売却する場合、一定の条件を満たせば譲渡所得から最大3000万円を控除できるという制度です。例えば2000万円で家を売却し、譲渡所得が2500万円出たとしても、この制度を使えば課税対象はゼロになります。制度の活用によって税負担を大幅に減らすことができるのです。

もちろんデメリットもあります。長年家族が暮らしてきた思い出の詰まった家を手放すことは、感情的に割り切れないものです。さらに地方の築古物件では需要が低く、なかなか買い手がつかないこともあります。それでも「所有するだけで損をする状況」になりつつある今、売却を選ぶことは冷静で合理的な判断といえるでしょう。

未来を考えるために必要な知識

空き家の未来をどうするかを決めるとき、感情や直感だけで判断するのは危険です。資産の行方を決定する以上、法律や税金、市場の動きなど最低限の知識を持っておくことが不可欠です。これらを理解しているかどうかで、最終的な選択の質と結果は大きく変わってきます。

まず押さえておくべきは、登記と相続の仕組みです。2024年4月から相続登記が義務化され、相続によって不動産を取得した人は「相続があったことを知った日から3年以内」に登記を行わなければならなくなりました。登記を怠れば10万円以下の過料を科される可能性があるだけでなく、売却や賃貸契約といった具体的な取引が不可能になります。つまり、どの未来を選ぶにしても「まず登記を済ませる」ことが出発点となるのです。さらに、複数の相続人がいる場合には遺産分割協議を通じて所有者を確定する必要がありますが、意見が対立すると調停や裁判に進むこともあります。判断を先延ばしにせず、家族が健在なうちから話し合っておくことが非常に重要です。

次に意識すべきなのが税金や制度の知識です。空き家の所有は常に固定資産税という負担を伴います。適切に管理されず「特定空家等」に指定されれば、それまで受けられていた住宅用地の軽減措置が外され、税額が数倍に跳ね上がることもあります。また、売却する場合には譲渡所得税がかかりますが、相続で取得した住宅には「被相続人居住用財産の3000万円特別控除」という優遇制度があります。条件を満たせば課税所得を大幅に減らせるため、税金を最小限に抑えるためには制度を正しく理解し活用することが欠かせません。相続税についても、不動産の評価額次第で大きな負担が発生するため、専門家への早めの相談が将来の安心につながります。

さらに忘れてはならないのが市場と地域の動向です。都市部の駅近物件であれば需要が高く、リフォームをすれば賃貸や売却に有利に働きます。一方で地方の過疎地域では買い手や借り手がなかなか見つからず、思い出だけで抱えてしまうと資産が負債に変わってしまうこともあります。ただし、自治体によっては空き家バンクや移住支援制度、リフォーム補助金を用意しているところもあります。地域の制度を調べて活用できるかどうかで、選択肢は大きく広がるでしょう。

また、空き家を所有することは保険やリスク管理の面でも知識が求められます。人が住んでいない家は火災や漏電、台風などの自然災害に対して脆弱で、放火や不法侵入の標的になるリスクも高まります。居住用を前提とした火災保険や地震保険は、空き家になると補償が制限されたり適用外となる場合があるため、必ず契約内容を確認する必要があります。場合によっては空き家専用の保険へ切り替えることが、将来の損害を防ぐ唯一の備えになるのです。

このように、登記と相続、税金と制度、市場の動き、そして保険とリスク管理。これらを理解したうえで未来の選択を考えなければ、感情や思い出に流されて誤った判断をしてしまう危険があります。逆に言えば、この知識を持つことで、貸すにしても、活かすにしても、売るにしても、自信を持って判断できるようになるのです。

まとめ ― あなたの空き家が描く未来はどの道か

空き家をどうするかという問いに、正解は一つではありません。

貸すことで収益を得ながら資産を維持することもできるし、リフォームして自分や家族の拠点にすれば思い出を守りながら暮らしを豊かにできます。そして売却を選べば、管理の負担から解放され、まとまった資金を新しいライフプランに活かすことができます。

大切なのは、空き家を放置しないことです。放置すれば資産価値は減り続け、固定資産税や修繕費といった負担だけが積み重なります。さらに、2024年からの相続登記義務化により「相続したけれど名義変更していない」という状態は法的にも許されなくなりました。動かずに時間が経てば経つほど、選択肢は狭まり、負担は増すばかりです。

ある不動産コンサルタントはこう言います。「空き家は放置すれば負の遺産。しかし行動次第で、地域を救う資産にもなる」。これは決して大げさな表現ではありません。貸すことで移住者や若者に住まいを提供でき、リフォームすることで家族のつながりを守れます。売却すれば、買い手が新しい暮らしを築き、地域に新しい風を吹き込むかもしれません。つまり空き家の未来は、所有者の判断と行動次第で変わります。あなたの家をどうするかは、あなた自身のライフプラン、家族の希望、そして地域の状況によって決まります。

「貸す」「活かす」「売る」――この三つの未来のうち、どの道を選ぶにしても、最も重要なのは「今、動き出すこと」です。未来を描くのは、空き家そのものではなく、それをどう扱うかを決めるあなたの意思なのです。

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